覚醒剤の怖さを知らしめる意味で見せられる
マウスの実験映像を見たことがありますか?
薬物事犯で刑務所に収容された受刑者は、何かしらのビデオを見ていると思いますが、モモは刑務所でも見たしYouTubeでも見ました。
モモが見た日本版のマウス実験映像では、
白衣を着た研究者がゲージにいるマウスをつまみ出し、覚醒剤水溶液の入った注射器を打ち、
その後マウスが痙攣したりする映像でした。
映像の古さとナレーションが、昭和のおどろおどろしい薬物のイメージを醸し出していました。
見終わった時に頭に浮かんだのは、
これって変だ…おかしくない⁈
マウスは自分の意志で薬物を摂取してないでしょ?
薬物の量も人間が調整した量だし。
無理矢理に覚醒剤を打たれたマウスがおかしくるのは当然のことだしね。
それを人間の薬物依存症クライアントに当てはめて戒めるようなナレーションを流しても、薬物が怖いものだとは思わないです。
薬物はそんなものじゃない。
怖いものじゃないし、
無理矢理するものでもない。
無理矢理打たれる人もいるみたいだけど、
それは犯罪。別な話し。
薬物を使用するしか生きる方法がない人もいる。
薬物使用の経験がない人にはある程度の抑止効果があるのかもしれないけど、偏見を生み出す元になっているだけだと思います。
「本当の依存症の話しをしよう」
モモが最近読んだ本です。
副題が「ラットパークと薬物戦争」とあり、著者はオーストラリア在住の漫画家、スチュアートマクミランさんです。
その本にはラットを使った薬物依存の実験と、薬物を法律で取り締まることで起こるリスクが描かれています。
この本は、依存症に罹患している人にも読んでもらいたいですが、保健福祉や行政、一般の人にも読んでもらいたいと、本の冒頭に書かれています。モモもそう思うので、この記事を書いています。
薬物依存が薬物依存症という病気だという認識は様々な人たちの啓発活動によって徐々に理解されているとは思いますが、今ある政策にはほとんど反映されていません。
それは、薬物を含め、ギャンブル、アルコールなどの依存症が本当に理解されていないからだと思います。
この本には、快楽主義に依存症の原因があるのではなく、社会的動物である人間が孤立することで、依存症に罹患する様をマウスの実験を通して書かれています。
マウスは最初ゲージの中に隔離され、無理矢理に薬物を打たれるのではなく、自分の意志で薬物を注射できる器具を身体に取り付けられ、自分でレバーを押して薬物投与できるように訓練されます。
ゲージの中に一匹で隔離されたマウスは、薬物を自己投与し続けて食べることも飲むこともせずに死んでしまいます。
その実験方法を人間に直接当てはめることに疑問を持ったある科学者が、少し方法を変えて実験をします。
ここでは詳細は省きますが、
ゲージに隔離したマウスの他に、ゲージに比べて200倍の広さのある囲いの中に、ヒマラヤスギの削りクズや、隠れたり遊んだりできる箱や缶を置き、複数のマウスたちが遊んだり喧嘩したり繁殖したり、社交的な繋がりを持てる環境にあるマウスも用意します。
ちなみにその環境を、ラットパークと名づけます。
ともに強力な依存性のある薬物に依存させられますが、ゲージに隔離されたマウスは薬物に依存し続け、ラットパークにいるマウスたちは依存症ではあるものの、薬物使用を減らしていくというものでした。離脱症状があっても、薬物を避ける傾向になったようです。この実験結果を通して、漫画の最後のコマにこう書かれていました。
「依存する、しないの違いは、人それぞれの世界観だとしたら?
自分が住んでいる世界をラットパークのような過ごしやすい場所と捉えるか…
それとも、ゲージのような孤独な場所と捉えるか。」
この言葉で締めくくられています。
この本の監修をされている精神科の松本俊彦医師が、依存症になる原因は快楽ではなく、その人が背負っている生き辛さや苦痛が薬物によって癒されることや、社会からの孤立感が影響していると言われていました。
その人の根っこにある生き辛さや苦痛、孤立感を取り除くためには、薬物依存症を理解する社会との繋がりが必要だともおっしゃっていました。
モモも、繋がりが大切だと今は素直に感じています…。
それですべてが解決して依存症が完治する訳ではないですが、依存症の症状が少しずつ緩和していくと思います。
正直に話せる人がまわりにいれば、嘘をつかなくてすむし、たとえスリップ(転ぶ)してしまっても理解と許しがあれば、また立ち上がって前に進む事が出来ると思います。
立ち上がる時しんどい時は、繋がりが少しだけ力を与えてくれるはず。
それを利用すればいいと思います。
そうすれば相手も自分の力を感じてくれて、
さらに力を与えてくれると思います。
NAやSNSの自助グループ、YouTubeなどで行われている薬物依存症クライアントの活動は、
この繋がりだと感じています。
この本には、薬物を法律で取り締まることのリスクも書かれています。それは次回の記事でお話ししますね。
(つづく)