薬物依存症からの回復を目指す

モモちゃの言いっぱなし

薬物離脱プログラム?

薬物事犯で服役中の受刑者は、薬物依存離脱教育を受けることになります。

モモは2度の懲役で、2度プログラムを受けました。昔は刑務所それぞれ指導教育の方法が違ったそうですが、今は全国的に統一されているようです。モモの記憶でも、ほぼ同じ内容のものを2度受けたと思います。

ちなみに性犯罪や被害者がいる犯罪の受刑者も、それぞれ指導教育プログラムがありますが、どんな内容か知らないので省きます。

 

「リラプス」とは、薬物を使用していた頃の行動、生活パターンに戻ってしまうこと。

そのリラプスがタイトルだったか目次にあったか覚えてないですが、小冊子を渡されてビデオを見せられました。

薬物によって生活が乱れていくAさんやBさん…とか、マウスに薬物を注射して、ほら、おかしくなりました…みたいなビデオです。仮釈放まで10回以上はあったと思いますが、指導内容の詳細はあまり覚えていません。

覚えているのはゴムパッチンと伸びをすること。薬物のことが頭に浮かんだら手首につけた輪ゴムを引っ張り離してパチンとさせる。

両手を組んで上に伸ばして思いっきり伸びをする…。あまりにも現実味のない対処法を指導されたので覚えているのだと思います。

伸びもそうですが、実際服役中の受刑者が工場での作業中にやれば懲罰の対象になるかもしれないような行為です。無許可で輪ゴムを持っていたら確実に調査になると思います。

調査とは、受刑者に違反と思われる行為があった場合に行われるもので、施設の担当刑務官による簡易的な調べと裁判のようなものがあり、懲罰を受けるかお咎めなしかを決めるものです。モモも出役拒否などで懲罰は2度経験しています。五日間何もせずただひたすら朝から晩まで安座して座ってるだけですが、本も読めないので結構辛かったです。

 

話しを戻してプログラムですが、一つ伝えておきたいことがあります。警察や拘置所、刑務所もそうですが刑事施設での薬物依存プログラムの考え方は矯正です。刑務所は矯正施設ですからあたりまえのことですが、刑務所の薬物依存プログラムには治療という考え方はないです。それを最初に感じたのは東京拘置所内の小さな受刑者用の個室に貼られたチラシでした。

「薬物依存にお困りの方へ」

刑事施設ではどこもそうだったと思いますが、薬物依存症の「症」の文字が削除されています。最初から省かれています。

刑務所でのプログラムも薬物離脱プログラムです。依存という言葉はあっても依存症という言葉はどこにもありませんでした。何故なら薬物依存は矯正対象、悪習であるという考えだからだと思います。症の字をつけて依存症にしてしまうと病気になってしまい、受刑者は病人。病人を刑務所に閉じ込めて懲役を科すことになるからです。シャバでは薬物依存症は病気という考えかたで治療につなげることで回復を目指します。まったくスタンスが違います。

 

でも、刑務所で行われる薬物教育にまったくメリットがなかったかというと、そんなことはありません。外からゲストとしてダルクの人たちが来るのですが、その人たちが語るお話しは現実的で、聞いていてとても有意義なものでした。ダルクの所長さんが来られた時に言われたのですが、「薬物をやめようなんて思わないほうがいい、私もやめようとは思ってないし、やめると公言していません。ただ、今日はやらない…明日はわからない、でも今日はやらない。それを積み重ねて10年以上が経ちました」と、言われました。

その時に初めて聞いたかな…「やめようなんて思わない」「そんな決心はしない」

まだ薬物依存症という言葉さえ知らなかったモモなので、思いがけないその言葉が頭に残りました。

モモもそう思います。

こんなのやめられるわけない…。

でも、その頃のモモは薬物は「やめるつもり」

だとまわりには言っていました。

服役中、工場での作業中に歯科治療に呼ばれ、抜歯治療後戻ってくると班長に言われました。

「…お前、歯が抜けるほどやりまくってたんだから、やめれないだろ…」

笑うしかなかったです…。

 

2度目の懲役時のプログラムでは、グループミーティングの他に臨床心理士との個別面談がありました。若い男性でしたが、その人はたわいない話しもモモの性癖の部分も偏見なく聞いてくれ、自身の酒好きを薬物に置き換えたりしてモモの言いっぱなしを理解してくれようとしていたと思います。モモも2度目の懲役の時には薬物依存症のことを少し勉強していたからね。その人との会話のやりとりの中で少しずつ頭の中でいろんなことが整理されていった気がします。自分で自分のことを話しながら、自分の方向性を決めていたのだと思います。グループミーティングでは出来ないことです。

 

薬物治療には、その人にあうものとあわないものがあると思います。モモにはこの臨床心理士との面談はよかったと思う。

認知行動療法というのも、この臨床心理士に教えてもらったことです。

書くこと、話すことで自分の気持ちを吐き出してそれに向き合う。そこで少し冷静になれる気がします。やめ続けたいと思ってる人、スリップしたけどまた一からやめ続けたいと思ってる人には認知行動療法もおすすめします。

 

モモの服役中、刑務所では現実味のない薬物離脱の方法を教えていました。そもそも出所したら「やる!」という人がほとんどでしたし、これに懲りてやめたいと思っている人にも特に役立つものではなかったと思います。

 

英語を身につけるため勉強しますが、日本で勉強するよりアメリカに行って勉強したほうが身につきますよね!刑務所の薬物離脱プログラムはそれに似ています。学んだとしても服役中は実際に試せないのでその場限りです。

懲役が邪魔しているんだと思います。

最初から治療に携わることができれば回復できる人は増えると思います。

 

これを書いていて思い出したことがあります。

刑務所のプログラムにもありました。

「賢くやめる」

抽象的な言葉じゃない?