薬物依存症からの回復を目指す

モモちゃの言いっぱなし

警察①

モモは前科三犯、二度の懲役の経験があります。今も昔も東京中野区に在住してますが、逮捕されたのはどこも遠方の警察です。

最初は神奈川県、二度目は千葉県、そしてこれを最後にしたいですが…東京都下にある警察です。三度ともガサ入れおはよう逮捕でした。

最初は覚醒剤ユーザーとしての逮捕で、売人が逮捕されての芋づる。二度目の理由は最後までわからなかった…。三度目は知り合いが捕まりの芋づる。しかも二度目と三度目は売人の嫌疑もかけられていました。

警察は逮捕するのがお仕事です。さすが公務員!きっちりやります。そして検察、起訴するのがお仕事。これもしっかりお仕事していますといいたいところですが、裏金議員が逮捕されていないのを見ると、日本の司法には最早潔癖な正義はないように感じます。

 

警察に逮捕されて裁判に至るまで、テレビや映画にあるような涙なくしては語れないような物語は一切ありません。警察は逮捕するだけです。決められたルールに基づき淡々と取り調べが行われ、調書が作成されます。

薬物事犯の場合、短くて10日、長くても20日の勾留です。その後、保釈手続きをして許可されれば保釈され、そうでない人は拘置所に移送され裁判を待つことになります。

取り調べ以外はずっと留置場にいるのですが、検察での調べもあり警察署を出ることもあります。パトランプのついたバスみたいな大型車に乗って移動するのですが、手錠と腰縄がついています。窓にはスモークフィルムが貼られていて外からは車内が見えませんが、中にいる被疑者は久しぶりに見る日常に惹きつけられます。朝早くに署を出ますが、道路脇の植え込みや出勤途中で急いでいる人たち、いつも食べている飲食チェーン店の看板…何もかもが新鮮に感じます。モモはそうでした…。そう、大病を患って退院した時のような感覚です。

 

取り調べでは使用時の詳細を聞かれます。

都下の警察でしたが、覚醒剤に似た結晶が入ったパケのサンプルや数種類のペン(注射器)が入ったケースを机の上に置き年配の刑事さんが質問してきました。

「…さんはどれくらい入れて使用したの?」

「最初はメモリで5くらいだったと思います」正直に話すと、とても驚いた顔をして、

「ほんとに?そんなに打ったら死んでしまうよ」と真顔で言われました。モモは透かさず

「え?刑事さん、それ普通の量ですよ。少ないほうです…。普通10メモリとか入れる人もいますよ。致死量は1グラムでしょ?」

その刑事さんは信じられないという顔でしたから、本当にそう思っていたのかな…。

そして、どこの警察でも聞かれましたが、

覚醒剤を打ったらどんな感じがした?」

と、聞かれました。咄嗟に出た言葉は、

「え?刑事さんやったことないんですか?」

何の思惑もなく出た素直な言葉です。

刑事さんもキョトンした顔でしたが、苦笑しながらやったことがないと言われました。

今でもあの時のことを思い出すと失笑してしまいます。でもその刑事さん、口臭がすごかった…。

 

勾留中いつもの取り調べ室とは違うところに連れて行かれたら担当主任刑事と数人の刑事がいて、今度はサンプルではなくパケに入った本物の大きなガンゴロを見せられていくつか質問をされました。たぶん他の事件で没収した証拠品。

初めて見る大きな塊で、10gなのか20gなのか…心拍数がバクバクに上がったのは間違いない。被疑者とはいえ薬物依存症者にあんなの見せたらダメだよね…。逮捕することだけしか考えてないから仕方ないけどさ…。

そこでのやりとりで、モモに対する売人の嫌疑は晴れたようです。残念だったのか、担当刑事さんは溜息ついたり頭抱えていたかな…。

二度目の逮捕の時は保釈が許可されなかったので、今回もダメなのかと思いながらも保釈申請

しました。弁護士の腕なのか制度上のことか、申請した翌日の夜に保釈されました。

保釈は普通午前中に行われると思っていたので諦めていましたが、夜8時くらいに呼ばれて告知されました。急かされるように荷物をまとめて、面会受付カウンターのあるところに連れていかれる。私物の受け取りをするのですが、留置場の宿直担当が「弁護士がよかったんだなぁ…」とかなんとか言いながら証拠品として預けていたものを返却してくれました。

「やっぱり弁護士さんの腕か…」

確かにこの時の弁護士さんはよかった気がします。国選の弁護士は当たりハズレあるからね。

弁護士の話しはまた別な機会にお話しします。

 

帰る準備をして待っていたのですが、夜というのもあり担当刑事がいなくて証拠品のスマホだけが戻せないということで、後日引き取りに行くということで警察署をあとにしました。

 

数日後、警察署にスマホを受け取りに行きます。ここからはX(Twitter)にもつぶやいたことです。

受付で用件を伝えて待っていると、担当主任刑事さんと見知った刑事2人が来ました。

簡単な挨拶をすませスマホを受け取り帰ろうとしたら、帰り際に担当主任刑事がこんなことを言いました。

「俺たちは違法薬物をこの世からなくすため頑張るから…さんも頑張ってな…」

えっ…?正直返す言葉がなかったです…。

この人は本気で言ってるの…?

言葉を返すことはなかったですが、頭の中に浮かんだ言葉があります。

「この世界から違法薬物をなくすのは、核兵器廃絶より難しいことだよ」

 

薬物にまったく縁にない人でも、世界中に違法薬物が蔓延している状況をなんとなくは理解していると思います。

警察の刑事がこんな非現実的なことを言うなんて…。もし本心で言っているとしたら…

 

ヤバいですよね?