ニ度目の懲役時から薬物依存症と向き合う決心をしました。一度目は理不尽極まる受刑生活の中で反省などできるはずもなく、ただただ時間が過ぎていくのを待ちました。一度目は執行猶予中の再犯というのもあり、執行猶予取消しにより前刑が追加されて長いものに…辛かった。
施設では場所的なことなのか、薬物で受刑している人は少なかった気がします。施設ではいじめや人を陥れるような行為をよく聞いたし見たりもしたし自分もいじめの対象にされたりもした。
テレビや映画でしか見たことのないフィクションの刑務所や受刑者は涙なしには語れない物語もありましたが、リアルに体験してみるとみんな犯した犯罪を反省しているようには思えなかったです。詐欺師は自分の犯罪を自慢していたし、性犯罪者も被害者の人数ややり口を事細かに説明して、まわりにいる者たちは興味津々に聞いていました。薬物の売人もいて出所後の営業行為もしていました。でも正直、みんなそんなに悪い人間にも思えなかった。優しさやおもいやりがある人もいるし、荒っぽかったり粗野な人もいましたが、根はみな気さくでいい人なんだなと思えました。もちろん例外もいたけど、関わることはほとんどなかった。
受刑生活では余暇の時間はほとんど本を読んで過ごしました。自分はフィクションはあまり好きではなく、若い頃から流行りの小説などは読まない派。ノンフィクション作家をよく読んでいました。特に沢木耕太郎は愛読した。例外は星新一とハリーポッターくらいかな。
ニ度目の受刑生活時に差し入れてもらった薬物依存症の本を読んでいて、なんとバカらしい現実に自分はつきあわされているかを自覚しました。
薬物依存症は病気。
厳罰は逆効果。
世界的には厳罰から治療へと変わりつつある。懲役を科せば科すほど依存症は進行する。
薬物が自分や家族を苦しめているのではなく、覚醒剤取締法という悪法が依存症者とそのまわりの人たちを苦しめていると感じました。
薬物依存症者を逮捕して裁判経由で懲役に服させるシステムこそ、悪のシステムだと自覚しました。
ニ度目の懲役を経て出所後、薬物に関する本や依存症に関する本を読み漁りました。そして、これ以上こんなバカげた現実につきあいたくないと思いました。
世界的には非犯罪化や合法化の流れの中、治療につながるアプローチがされている。それが現実。しかし、今の日本では薬物依存症は病気と認めつつも逮捕されて受刑者になるのが現実。悪いのは違法とされている薬物ではなく、理不尽極まる日本のシステムだと思いました。
覚醒剤取締法という悪法によるものだ。この負のシステムに取り込まれないようにするための唯一の方法は、薬物依存症を回復させること。薬物をやめ続けことしか今はないです。
薬物依存症の完治はない。治すための特効薬もない。ただひたすらにやらない日を1日1日を積み重ねることしかできない。
「ダメ？ゼッタイ？」「ダメ！ゼッタイ！」
親と子の会話のようです。
そもそも薬物乱用防止でキャンペーンをする感覚もおかしくない？
薬物乱用防止は正確な情報を持つ人が薬物と出会う前の人にちゃんと教育するべき事だと思います。なぜなら日本人には違法薬物の極端に歪められたイメージが刷り込まれているから…。
アルコールがもっとも強い毒性を持ち、巷ではアルコールが絡んだ事件も数多く起きているのに合法の薬物として販売されています。
アルコール依存症者がアルコールを飲み続ければ末路はまさしく廃人。しかし、テレビや店頭で販売促進キャンペーンはあるものの、アルコール乱用防止キャンペーンはない。
あたりまえのことだろ？
飲酒も喫煙も税の収入源なんだから。聞いた話によると、酒税は年間約1兆円の税収があるそうですが、アルコール依存症対策として国が使うお金は4兆円になるらしいです。
なんとバカげたことか…。
昔日本のすごく有名なミュージシャンが大麻で逮捕された時に、「国の権威がある人たちが吟味して作った法律だから私は守る」というようなことを言ったと何かの記事で見たことがありますが、果たしてどうだったのでしょうか？
大麻取締法は占領時GHQの指示で制定された法律です。今、世界では合法化されている国もあり今一度、見直されるルールだと感じます。
ポルトガルに行くぅ？
あそこはすべての薬物が合法らしい。
中国は死刑になるの？
いえ、営利や製造、密輸は死刑になる可能性がありますが、使用に関しては罪に問われないらしいです。しかし、どちらも国が主導する治療的アプローチが存在します。
ポルトガルは薬物依存症になった根本的原因を解決するための社会的アプローチがあり、成果を出しているようです。中国では罰金を支払った上で強制的に治療的アプローチにつながるらしいです。
日本は？
最初は緩い…。しかし、ダラダラと人の尊厳を
奪っていく。
一見、どの国よりも平和で、暮らしやすいように思える日本ですが、自殺者の増加はこの国の生きづらさを示していると思います。
生きづらさを感じている人や依存症者に新たな人生のスタートがきれるような社会になるためには…何が必要だと思いますか？
