薬物依存症からの回復を目指す

モモちゃの言いっぱなし!

Books for Addiction(依存症のための本)②

前記事のつづきになります。

サイエンス、医学、司法、個人の回顧録など薬物に特化して読んだ本がほとんどだけど、著者や国によって薬物の扱いに明らかな違いがありました。

欧米のサイエンスや医学、依存症をテーマにした本、前記事で紹介した松本俊彦医師を含む依存症問題に取り組んでいる人たちの本では、どの本も薬物を悪とは見做さずに語っているのに対して、日本の薬物使用経験のある個人の回顧録などは、薬物は恐ろしい物で人間を堕落させ廃人にしてしまうようなものとしてか書かれていたような気がします。それぞれの国の依存症に対する認識の違いで司法や政策に違いはあるけど、日本では前科のある依存症当事者が公に情報を発信する場合、本音と建前があるように感じました...。

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本当の依存症の話をしよう ラットパークと薬物戦争

オーストラリアの社会派漫画家スチュアート・ミランさんが依存症研究者を取材し、それをもとに依存症問題をノンフィクション漫画として描いたものです。二部構成になっていて、最初はラット(実験動物化されたネズミ)を使った薬物依存症の研究について。二つ目は薬物を禁止する法律が如何に愚策であるかをアメリカの禁酒法と照らし合わせて説明しています。ストーリー性のある漫画なので、読みやすくわかりやすいと思います。他に解説が二篇あって、松本俊彦医師と小原圭司氏(ギャンブル依存症)の解説が掲載されています。

※日本でのラットの薬物実験の映像を服役中に見たことがあるのですが、モモとしてはツッコミどころが満載でした。ネズミの首根っこをつかまえて覚醒剤を注射したらネズミの挙動がおかしくなる映像で、痙攣をしているような映像もあったような記憶もあります。🐭おどろおどろしいBGMがバックに流れ、恐怖と不気味さを煽るナレーションで昭和の灰色イメージを醸し出す映像でした。

この本でもラットを使った薬物依存症の研究が行われその結果をテーマにしているのですが、研究方法は日本のものとは全く違っていました。無理矢理に薬物を接種するのではなく、🐭ラット自ら薬物を使用するかどうかの選択ができる状況を作っての研究です。研究者は過去の研究データーを考察し、その研究の方法やレベルを徐々に変えていき依存症の本質を理解しようとしています。依存症入門書としては理解しやすいと思いました。

研究が行われている国が北米なのでヘロインが主体になっていると思いますが、日本で主体になるセックスドラッグとも言われる薬物(覚醒剤)を考えると、ラットを使った実験ではそこにセックスなど他の依存行為が反映されてないことが気になりました...。

司法をテーマにした部分は薬物を禁止する法律が社会に依存症者とスティグマを生み出し、ブラックマーケットが潤うことを禁酒法時代に経験していたアメリカが、過去の過ちを指摘されているにもかかわらず、繰り返していく様が描かれていたように思います。現在、当時のアメリカ政府の薬物政策の愚策はハームリダクションや非犯罪化、合法化などに変革されていますよね。それはリベラルではなくサイエンスだと思いたいですが、日本はその逆を歩んでいることに見えない何かを感じてしまいます。

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しらふで生きる 大酒飲みの決断

ミュージシャンであり芥川賞作家でもある町田 康さんが三十年間毎日飲み続けた酒を突然やめようと思い立ち、苦悩と葛藤の中で断酒する記録です。

※モモは若き頃、音楽を生活の糧にしていた時期があったのですが、パンクにはあまり縁がなくて著者の名前は知りませんでした。X(twitter)のアルコール依存症の方のポストでタイトルや名前を知ったのですが、パンク系ミュージシャンに少し抵抗があったのか...暫くはスルーしていました。本屋さんで何かしら探索していた時に手にとる機会があり目次をチラ見すると、

酒やめますか? 人間やめますか?

の文字が目に入り読んでみようと思いました。

その場では購入せず暫くしてメルカリで購入。

雑誌に連載されていたものがまとめられた本ですが、お酒をやめてからの紆余曲折なお話に、まるで文学作品を読んでいるかのように引き込まれていきました。途中、支離滅裂に感じるところもあったのですが、そこは文学ならではなのかなぁ...と、思いつつも読み進め、読み終わってみると薬物と同じところがあるな...と、思いました。

断酒は狂気 飲酒は正気

この言葉は何度も出てくるのですが、モモは断薬しながら似たような考えを持ったことがあります。違法か合法かの違いはもちろんあるのですが、違法とされている薬物を使用する人がハイになることだけが目的じゃなくて、普通になるために使用するっていう人がいたのを思い出します...。

全編を通して断酒の苦しみはさほど感じられず、思考脳を使って断酒しているように思える内容でした。こんなことモモが言うのは失礼かもしれないけど、言葉の使い方や喩えの引用などさすがはプロの作家だと感じたょ🙂。

モモはアルコールを若干は嗜みます。ただし、ギャンブルと薬物、二つの依存症を経験しているので、お酒を飲むにしても気をつけて飲むようにはしています。適量と休肝日は必須。本の中にもありますが旨いものを食べる時はお酒が欲しくなるでしょ?! 休肝日を設ける時は一汁一菜の質素な食事で済ませるようにすることでお酒を避けるようにしています。

健康にリスクを抱えながら断酒をしている人や節酒をしている人は本を読んでいる場合ではないのですが、本の解説にもあるようにお酒をやめようとする気持ちに勇気を与えてくれる本だと思います。

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他にも紹介したい本がありますがとりあえずここまでで終わりにします。前記事の冒頭でも言いっぱなしましたが、本を読んで依存症が治るわけではないです。モモは、本を読むことは依存症が何なのかを知るための一つの方法だと思います。

こんな言葉があります。

薬物、ギャンブル、アルコールの依存症患者であるという事は、

その病気を知る証人、証言者であるという事。

その病気の根っこは同じだけど、

それぞれ違う症状を語る証人であるという事。

そして、それを回復させるための様々な方法を知る医者でもあるという事。

しかし実際は、依存症当事者は依存症であることを認めず、治療につながろうとする人は少ないと感じています。何故ならモモ自身がそうだったからです。

自虐的で周りの大切な人たちを巻き込むような物質依存や依存行為に困惑した時、先達者やその道の研究者の知識や経験は、何かしらの役に立つと思っています。

 

自分だけが楽しめている時間は、そんなに長くはないんだよね...。

 

本の情報

☆本当の依存症の話をしよう ラットパークと薬物戦争

 スチュワート・マクミラン 星和書店

☆しらふで生きる 大酒飲みの決断

 町田 康 幻冬舎